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AIより先にやること!問い合わせ対応が属人化する会社の「ルールがない」という病

AIより先にやること!問い合わせ対応が属人化する会社の「ルールがない」という病

「うちの会社の問い合わせ対応、〇〇さんしかできない…」そんな状況に陥っていませんか?特定の担当者にしか対応できない「属人化」は、業務のボトルネックとなり、顧客満足度の低下や機会損失を招く深刻な問題です。AIチャットボットなどの最新技術の導入を検討する声も聞かれますが、その前に、多くの会社が陥っている根本的な原因に目を向ける必要があります。それは、ずばり「ルールがない」ことです。本記事では、問い合わせ対応の属人化をAI以前の段階で、いかに「ルール化」によって解消していくのか、その具体的な方法と重要性を解説します。

問い合わせ対応が属人化する「本当の原因」

「うちの会社の問い合わせ対応は、〇〇さんなしには回らない」

もし、あなたの会社でこのような声が聞かれるなら、それは問い合わせ対応が「属人化」している証拠です。特定の担当者にしか対応できない状況は、一見すると「優秀な人材がいる」とポジティブに捉えられがちですが、実際には企業にとって深刻なリスクをはらんでいます。

多くの経営者や部門長は、属人化の問題を解決するために、AIチャットボットなどの最新テクノロジーの導入を検討します。しかし、その前に立ち止まって考えるべきことがあります。なぜ、そもそも問い合わせ対応は属人化してしまうのでしょうか?

その本当の原因は、多くの場合、「ルールがない」ことに尽きます。

「ルール」とは、具体的な対応手順、回答の基準、情報共有の仕組みなど、業務を標準化するための取り決めを指します。これが不在であるために、個々の担当者がそれぞれの判断で対応せざるを得なくなり、結果として「あの人しか知らない」「あの人に聞かないとわからない」という状況が生まれるのです。

AIは確かに強力なツールですが、そもそも業務のルールが明確でなければ、AIも何を学習し、どう回答すべきかを判断できません。つまり、AI導入の前に、まずは「ルールがない」という根本的な問題を解決することが、属人化解消への第一歩となるのです。

なぜ問い合わせ対応の属人化は「ルールがない」から起こるのか

問い合わせ対応が特定の担当者に集中してしまう「属人化」は、多くの企業で課題となっています。この問題の根源にあるのは、多くの場合「ルールがない」ことです。誰が、いつ、どのように対応すべきかという明確な基準や、過去の対応履歴、解決策が共有されていないため、特定の個人に知識や経験が蓄積され、結果として属人化を招きます。

このようなルール不在の状態が、具体的にどのような弊害をもたらすのかを見ていきましょう。

担当者不在時の業務停止リスク

特定の担当者にしか対応できない状況では、その担当者が不在になった途端に業務が停止するリスクを常に抱えています。例えば、問い合わせ対応を一手に引き受けている担当者が急な休暇や退職でいなくなった場合、他の社員は顧客からの問い合わせに適切に対応できず、混乱が生じます。

「〇〇さんに聞かないと分からない」「〇〇さんが戻るまで待ってほしい」といった状況は、顧客を待たせるだけでなく、重要なビジネスチャンスを逃すことにもつながりかねません。これは、個人のスキルに依存しすぎた結果、組織全体としての対応力が著しく低下している状態と言えるでしょう。

新人教育への悪影響

ルールがない環境では、新人教育も非効率的にならざるを得ません。明確なマニュアルやナレッジベースが存在しないため、新人はOJT(On-the-Job Training)で既存の担当者から口頭で知識を学ぶしかありません。しかし、OJTだけでは教える側の負担が大きく、教わる側も体系的に学ぶことが難しいため、習熟までに時間がかかります。

結果として、新人が独り立ちするまでに膨大な教育コストがかかり、また、教える担当者によって対応品質にばらつきが生じる可能性も高まります。これでは、せっかく新人を採用しても、戦力化するまでに時間がかかり、組織全体の生産性向上にはつながりません。

顧客満足度の低下と機会損失

問い合わせ対応の属人化は、顧客満足度の低下に直結します。対応が特定の担当者に集中していると、その担当者が多忙な場合に回答が遅れたり、担当者によって回答内容や品質に差が出たりすることがあります。顧客は一貫した高品質なサービスを期待しているため、対応の遅延や品質のばらつきは不満につながりやすいのです。

また、担当者しか知らない情報があるために、顧客からの問い合わせ内容を正確に把握しきれず、結果として適切な提案ができなかったり、潜在的なニーズを掘り起こせなかったりすることも少なくありません。これは、単に顧客満足度を下げるだけでなく、新たなビジネスチャンスを逃す「機会損失」にもつながる深刻な問題です。顧客からの信頼を失い、競合他社に流れてしまうリスクも高まります。

AI導入以前に「ルール化」が不可欠な理由

AIチャットボットや自動応答システムなど、最新のテクノロジーを活用した問い合わせ対応の効率化は、多くの企業にとって魅力的な選択肢です。しかし、これらのAIツールがその真価を発揮するためには、導入以前に「ルール化」された盤石な土台が不可欠であることを理解しておく必要があります。

ルール化されていない状態でAIを導入しても、期待する効果は得られにくいでしょう。なぜなら、AIは「与えられたデータ」に基づいて学習し、応答するからです。もし、問い合わせ内容や対応履歴に一貫性がなく、担当者によって対応がバラバラであれば、AIは何を学習し、どのように最適な回答を生成すればよいのか判断できません。結果として、誤った情報を提供したり、顧客の意図を汲み取れない不適切な応答を繰り返したりするリスクが高まります。

例えば、顧客からの同じような質問に対して、ある担当者はAという回答をし、別の担当者はBという回答をしている状況では、AIはどちらを「正解」として学習すればよいのでしょうか。このような曖昧なデータでは、AIは混乱し、精度の低い応答しかできません。

ルール化とは、問い合わせ内容の分類、対応の優先順位付け、回答のテンプレート化、エスカレーションフローの明確化など、一連の対応プロセスを標準化することです。これにより、AIは一貫性のある高品質なデータを学習し、より正確で効率的な対応が可能になります。

つまり、AIは魔法のツールではなく、あくまで「ルールに基づいた効率化を加速させるツール」です。属人化された対応をAIに置き換えても、それは「属人化されたAI」を生み出すだけであり、根本的な問題解決にはつながりません。AI導入の前に、まずは人手による対応プロセスをルール化し、誰もが同じ品質で対応できる状態を築くことこそが、真の効率化と顧客満足度向上への最短ルートなのです。

問い合わせ対応を「ルール化」するための具体的なステップ

問い合わせ対応の属人化を解消し、誰でも質の高い対応ができる体制を築くためには、明確なルール作りが不可欠です。ここでは、AI導入以前に実践できる、具体的なルール化のステップを解説します。

ステップ1:現状の問い合わせ内容と対応フローの棚卸し

まず、自社の問い合わせ対応における現状を正確に把握することから始めましょう。既存の問い合わせの種類、発生頻度、対応にかかる時間、担当者、そして現在の対応フローの問題点などを具体的に洗い出す作業です。

この棚卸しでは、以下のような観点で情報を集めると良いでしょう。

  • 問い合わせチャネル: 電話、メール、チャット、Webフォームなど、どこから問い合わせが来るのか。
  • 問い合わせ内容: よくある質問、緊急性の高い質問、特定の担当者しか対応できない質問など、内容を分類します。
  • 対応時間: 一件あたりの平均対応時間、解決までの時間、対応が長期化するケースなどを特定します。
  • 担当者: 誰がどの問い合わせに対応しているのか、特定の担当者に集中している業務はないかを確認します。

これらの情報を可視化することで、どこに属人化の原因があり、どの部分からルール化を進めるべきかが見えてきます。

ステップ2:対応基準と回答集(FAQ)の作成

現状を把握したら、次に対応基準を策定し、よくある質問とその回答(FAQ)を体系的に作成します。これにより、担当者ごとの対応のばらつきをなくし、顧客に対して一貫した情報提供が可能になります。

対応基準の策定では、「どのような問い合わせに対して、どの範囲まで回答するのか」「緊急時のエスカレーションフローはどうするか」といった基本的なルールを明確にします。

FAQの作成においては、ステップ1で棚卸しした「よくある質問」を基に、簡潔で分かりやすい回答を作成します。顧客が自己解決できるようなFAQサイトを構築したり、社内向けのナレッジベースとして整備したりすることで、問い合わせ件数の削減や対応時間の短縮にもつながります。FAQは一度作って終わりではなく、定期的に見直し、最新の情報に更新していくことが重要です。

ステップ3:対応マニュアルの整備

対応基準とFAQが準備できたら、それらを基に具体的な対応マニュアルを整備します。このマニュアルは、新入社員でも参照すれば一定レベルの対応ができることを目標に作成します。

マニュアルには、以下のような要素を盛り込むと良いでしょう。

  • 基本的な対応フロー: 問い合わせ受付から解決までのプロセスを可視化します。
  • チャネル別対応方法: 電話、メール、チャットなど、チャネルごとの具体的な話し方や書き方の例。
  • FAQへの誘導方法: 顧客が自己解決できるよう、FAQサイトへの誘導方法も記載します。
  • トラブルシューティング: よくあるトラブルと、その解決策やエスカレーション先を明記します。
  • 禁止事項と注意点: 個人情報の取り扱い、クレーム対応の心得など、重要なルールを記載します。

マニュアルは、文章だけでなく、フローチャートや画像などを活用して視覚的に分かりやすくすることがポイントです。これにより、理解度が深まり、実践に繋がりやすくなります。

ステップ4:情報共有ツールの活用

作成したマニュアルやFAQ、日々の問い合わせ対応で得られたナレッジを効率的に共有・管理するためには、情報共有ツールの活用が不可欠です。AI導入以前の段階でも、様々なツールを導入することでナレッジマネジメントを促進できます。

例えば、社内Wikiツール、グループウェアの共有機能、あるいは専用のナレッジマネジメントシステムなどが挙げられます。これらのツールを活用することで、担当者個人に蓄積されがちなノウハウを組織全体の資産として共有・活用できるようになります。

重要なのは、ツールを導入するだけでなく、社員が積極的に情報を登録し、活用する文化を醸成することです。定期的な情報更新を促したり、優れたナレッジを共有した社員を評価したりするなど、運用面での工夫も求められます。

属人化解消に向けた社内文化の醸成

問い合わせ対応の属人化解消は、単にルールやツールを導入するだけで完結するものではありません。それらを組織に定着させ、継続的に運用していくためには、社内全体の文化を醸成していくことが不可欠です。特に、情報共有を当たり前とする意識改革、成功事例の積極的な共有、そして継続的な改善活動の促進は、属人化を根本から断ち切る上で重要な要素となります。

経営層やマネージャー層は、こうした文化をリードする役割を担います。例えば、定期的なミーティングで情報共有の重要性を繰り返し伝えたり、ナレッジを積極的に共有した社員を評価する仕組みを導入したりすることで、従業員の情報共有への意識を高めることができます。また、小さな成功体験でも積極的に社内で共有し、他の部署や担当者にも良い影響を与えることで、組織全体で属人化解消に取り組む機運を高めることが可能です。

誰もが最新の情報にアクセスでき、必要な時に適切な対応ができる「自律的な組織」を目指すためには、ルールや仕組みだけでなく、それを支える「情報共有を促進する社内文化」の醸成が何よりも重要なのです。

まとめ:AI時代こそ、基本となる「ルール」が重要

本記事では、問い合わせ対応の属人化が「ルールがない」という根本原因から生じていることを解説し、AI導入以前に実施すべきルール化の重要性と具体的なステップをご紹介しました。

特定の担当者に業務が集中し、担当者不在時に業務が滞るリスクや、新人教育の非効率性、さらには顧客満足度の低下や機会損失といった問題は、多くの企業が直面している課題です。しかし、これらの問題は、適切なルールやマニュアルを整備し、情報共有の仕組みを構築することで解決へと導くことができます。

AIチャットボットなどの最新技術は、問い合わせ対応を効率化する強力なツールであることは間違いありません。しかし、その効果を最大限に引き出すためには、まず自社の問い合わせ対応プロセスが標準化され、誰もが一定レベルの対応ができるような「ルール」が確立されている必要があります。ルールが曖昧なままAIを導入しても、期待する効果は得られないでしょう。

ぜひ、本記事で解説した「現状の棚卸し」「対応基準と回答集の作成」「対応マニュアルの整備」「情報共有ツールの活用」というステップを踏み、属人化を解消してください。それこそが、業務効率の向上、顧客満足度の向上、そして来るべきAI時代を乗りこなすための強固な基盤となるはずです。

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この記事の監修者

脇村 隆

1997年のインターネット黎明期よりWeb制作に従事。イニット(現・トランスコスモス)、ぴあデジタルコミュニケーションズ、NRIネットコム等にて、HTMLコーダー、ディレクター、プロデューサー、コンサルタントとして大手企業Webサイト構築の上流から下流まで一貫して担当。
コーポレート/サービス/金融機関サイトの再設計や情報設計を軸に、自然検索からの集客向上とCV改善を多数実現。2012年にプラス・ムーブメント合同会社を設立し、14期目を迎える現在もWebサイト制作・PR支援を展開。商工会・自治体をはじめ公的機関案件を12年連続で継続支援し、運用内製化や業務効率化(kintone等)まで伴走。
単著『アフィリエイターのためのWeb APIプログラミング入門』をはじめ、各種セミナー登壇多数。GUGA 生成AIパスポート(2025年6月取得)を保有。
現在は「AIミライデザイナー」代表として、戦略立案からWebサイト実装・SEO対策、集客後のAI・DX推進までを伴走型でワンストップ提供。