Webリテラシー

ユーザビリティテストとは?目的、手順、分析方法を分かりやすく解説

ユーザビリティテストとは?目的、手順、分析方法を分かりやすく解説

「せっかく開発したWebサイトやアプリなのに、ユーザーがすぐに離れてしまう…」「もっと使いやすく改善したいけれど、具体的にどこを直せばいいかわからない…」

そんな悩みを抱えていませんか?

もし、あなたがユーザーの本当の使い心地を知り、具体的な改善策を見つけ出し、最終的にビジネス成果に繋げたいと考えているなら、この記事はきっとお役に立てるはずです。

この記事では、「ユーザビリティテスト」の基本的な概念から、具体的な実施手順、結果の分析方法、そして改善提案までを、初心者の方にも分かりやすく解説します。さらに、テストを成功させるための実践的なコツや、おすすめのツール・サービスもご紹介。この記事を読み終える頃には、あなたもユーザビリティテストを自信を持って実施できるようになっているでしょう。

ユーザビリティテストとは?その目的と重要性

「ユーザビリティテスト」とは、開発中のWebサイトやアプリケーションを、実際のターゲットユーザーに利用してもらい、その操作状況を観察・記録することで、使いやすさに関する課題や改善点を発見する評価手法です。

このテストの最大の目的は、開発者側が想定する「理想のユーザー体験」と、実際にユーザーが感じる「現実のユーザー体験」とのギャップを明確にすることにあります。ユーザーがどこで迷い、どこで不満を感じ、何を求めているのかを客観的に把握することで、漠然とした「使いにくい」という感覚ではなく、具体的な改善策へと繋げることが可能になります。

ユーザビリティテストは、ユーザー満足度の向上はもちろん、結果としてWebサイトの離脱率低下やコンバージョン率の改善といったビジネス成果に直結する、非常に重要なプロセスと言えるでしょう。

ユーザビリティテストで何がわかるのか

ユーザビリティテストを実施することで、単に「使いやすいか、使いにくいか」という抽象的な評価だけでなく、ユーザーの具体的な行動や思考パターンから多岐にわたるインサイトを得ることができます。例えば、ユーザーが特定のタスクを完了するまでにどれくらいの時間がかかったのか、どのボタンを探していたのか、どの情報を見つけられずに困っていたのか、といった具体的な「つまずきポイント」が明らかになります。

また、ユーザーが何を期待し、何に裏切られたのか、なぜその操作をしたのか、といった心理的な側面や、製品に対する感情なども引き出すことが可能です。これにより、アクセス解析などの定量データだけでは見えにくい「なぜユーザーはその行動をとったのか」という背景や理由を深掘りし、本質的な課題解決に繋がる示唆を得ることができるのです。

ユーザビリティテストの種類

ユーザビリティテストには、その目的や実施環境によってさまざまな種類があります。それぞれの特徴を理解し、自社の状況や知りたい情報に合わせて最適なテスト手法を選択することが重要です。ここでは、主要な分類である「定性・定量」および「リモート・対面」のテストについて詳しく解説します。

定性テストと定量テスト

ユーザビリティテストは、知りたい情報の種類によって大きく定性テストと定量テストに分けられます。

定性テスト

ユーザーが「なぜ」そのような行動をとったのか、どのような感情を抱いたのかといった、行動の背景にある理由や感情を深く理解することを目的とします。少数のユーザーに対して詳細な観察やインタビューを行うのが一般的です。

  • メリット:
    • ユーザーの思考プロセスや感情、潜在的なニーズを深く探れる。
    • 予期せぬ問題や新しい発見につながりやすい。
    • 具体的な改善点やアイデアを得やすい。
  • デメリット:
    • 少数の意見であるため、全体を代表するものではない可能性がある。
    • 結果の数値化が難しく、統計的な根拠にはなりにくい。
    • 実施に時間とコストがかかる場合がある。
  • 適したシナリオ: 新機能の初期段階での評価、複雑な操作フローの理解、ユーザーの満足度や不満の原因を探る場合など。

定量テスト

多数のユーザーからデータを収集し、「何が」起きているのかを数値で客観的に把握することを目的とします。タスク完了率、エラー発生率、所要時間などの指標を用いて、統計的に分析します。

  • メリット:
    • 統計的に信頼性の高いデータを取得できる。
    • 複数のデザイン案を比較検討する際に客観的な判断基準となる。
    • 時間の経過による改善効果を数値で示しやすい。
  • デメリット:
    • 行動の背景にある「なぜ」までは探りにくい。
    • テスト設計が不正確だと意味のないデータになる可能性がある。
    • 大量のユーザーが必要となるため、コストがかかる場合がある。
  • 適したシナリオ: 既存機能のパフォーマンス測定、A/Bテストによる効果検証、特定の変更がユーザー行動に与える影響の評価など。

両者は対立するものではなく、それぞれの利点を活かして組み合わせて実施することで、より包括的な洞察を得ることが可能です。

リモートテストと対面テスト

テストの実施場所や形式によっても、ユーザビリティテストはリモートテストと対面テストに分類されます。

リモートテスト

インターネットを介して、テスターとユーザーが物理的に離れた場所で実施するテストです。ユーザーは自宅などから、指定されたタスクをオンラインツールを使って実行します。

  • メリット:
    • 地理的な制約がなく、多様な地域のユーザーを募集しやすい。
    • 短期間で多数のユーザーからデータを収集できる。
    • ユーザーがリラックスできる環境で参加できるため、より自然な行動が見られる可能性がある。
    • コストを抑えやすい。
  • デメリット:
    • ユーザーの表情や細かな仕草、環境を直接観察できない。
    • テスト中のサポートが難しく、技術的なトラブルが発生しやすい。
    • 深い質問や偶発的な発見が生まれにくい。
  • 適したシナリオ: 広範囲からのユーザー意見収集、短期間でのフィードバック取得、特定のタスク完了率などの定量データ収集。

対面テスト

テスターとユーザーが同じ場所に集まり、対面で実施するテストです。テスターはユーザーの操作を直接観察し、その場で質問や深掘りを行うことができます。

  • メリット:
    • ユーザーの表情、視線、身体言語など、非言語情報を含めて詳細に観察できる。
    • 不明点があればすぐに質問し、ユーザーの思考プロセスを深く理解できる。
    • 複雑なプロトタイプや物理的な製品のテストにも適している。
    • 予期せぬ問題やインサイトを発見しやすい。
  • デメリット:
    • 場所の確保や機材の準備が必要。
    • 参加ユーザーの募集が地理的に限定されやすい。
    • リモートテストに比べて時間とコストがかかる。
    • ユーザーが監視されていると感じ、不自然な行動をとる可能性がある。
  • 適したシナリオ: 複雑なUIの評価、ユーザーの感情や潜在的なニーズの深掘り、製品の初期段階での包括的なフィードバック収集。

近年では、コロナ禍の影響もあり、リモートテストのツールや手法が進化し、手軽に実施できるようになっています。しかし、より深い洞察を得たい場合には、対面テストが依然として有効な手段となります。

ユーザビリティテスト実施のメリット・デメリット

ユーザビリティテストは、Webサイトやアプリの改善に非常に有効な手段ですが、実施にはメリットとデメリットの両面があります。ここでは、それぞれを詳しく見ていきましょう。

メリット

ユーザビリティテストを実施することで、以下のような多岐にわたるメリットを享受できます。

  • ユーザー行動の深い理解と潜在的な課題の発見: ユーザーが実際に製品を使う様子を観察することで、「なぜここでつまずくのか」「何に困っているのか」といった、アンケートやアクセス解析だけでは見えにくい深層心理や潜在的な課題を直接的に把握できます。開発者やデザイナーの思い込みとは異なる、リアルなユーザーの視点を得られる点が最大の強みです。
  • 開発コスト・手戻りの削減: 開発の早い段階でユーザビリティ上の問題を特定し、修正できるため、リリース後の大規模な改修や手戻りを防げます。結果として、開発時間とコストを大幅に削減することに繋がります。
  • コンバージョン率(CVR)の向上: ユーザーがつまずくポイントや離脱原因を特定し改善することで、サイト内での目標達成(購入、登録、問い合わせなど)を阻害する要因を取り除けます。これにより、コンバージョン率の向上が期待できます。
  • 顧客満足度・エンゲージメントの向上: 使いやすいプロダクトはユーザーにストレスを与えず、快適な体験を提供します。これにより、ユーザーの満足度が向上し、リピート利用やサービスのファン化を促進します。
  • チーム内の共通認識の醸成: テストの実施を通じて、ユーザーが抱える問題点や改善の方向性について、開発・デザイン・マーケティングなどのチームメンバー間で共通の認識を持つことができます。これにより、建設的な議論が生まれ、より効果的な改善策を導き出しやすくなります。

デメリット

一方で、ユーザビリティテストには以下のようなデメリットも存在します。これらを理解し、適切な対策を講じることが重要です。

  • 時間とコストがかかる: テストの企画、参加者の募集、実施、分析には、それなりの時間と費用、そして人的リソースが必要です。特に、質の高いテストを実施しようとすればするほど、これらのコストは増加します。
  • 適切な参加者の選定が難しい場合がある: ターゲットとするユーザー層と合致しない参加者を選んでしまうと、得られる結果の信頼性が低下します。適切な参加者を募集し、選定するプロセスは、テストの成否を分ける重要な要素です。
  • 結果の解釈に専門知識が必要: 収集したデータや観察結果は、単なる事実の羅列ではなく、専門的な視点から分析し、具体的な改善策へと繋げる必要があります。この解釈には、UXデザインや心理学に関する知識が求められることがあります。
  • 観察者バイアスの可能性: テスト実施者の先入観や期待が、ユーザーの行動や発言、あるいは結果の解釈に影響を与えてしまう可能性があります。これを避けるためには、客観的な視点を持ち、複数人で観察・分析を行うなどの工夫が必要です。

ユーザビリティテストの基本的な進め方:5つのステップ

ユーザビリティテストを初めて実施する担当者でも、迷わず実践できるよう、企画から改善提案までの一連のプロセスを5つのステップに分けて具体的に解説します。各ステップで何を行うべきか、どのような点に注意すべきかを明確にすることで、実践的なガイドとなるでしょう。

ステップ1:テストの企画・目標設定

ユーザビリティテストを始める上で最も重要なのが、テストの企画と目標設定です。「なぜこのテストを行うのか」「何を明らかにしたいのか」という目的を明確にすることで、その後のすべてのプロセスがスムーズに進みます。

まず、Webサイトやアプリケーションのどの部分に課題があるのか、どのようなユーザー行動を改善したいのかを具体的に定義しましょう。例えば、「ECサイトのカート投入率が低い原因を探る」「新規ユーザーのオンボーディングプロセスを改善する」といった具体的な目標を設定します。

次に、その目標を達成したかどうかを測るための具体的な評価指標(KPI)を設定します。タスク完了率、エラー発生率、タスクに要した時間、ユーザーの主観的な満足度などが考えられます。この段階で、テストの対象となる機能や画面、想定するターゲットユーザー、予算、スケジュールといった初期計画も立てておきましょう。

ステップ2:テスト対象とタスクの設計

目標と評価指標が定まったら、実際にユーザーに何をしてもらうかを示す「タスク」を設計します。テスト対象となるWebサイトやアプリケーションの中から、特に検証したい機能やユーザーフローを特定しましょう。

タスクは、ユーザーが普段行うであろう自然な行動をシミュレーションできるように、具体的なシナリオ形式で作成するのが効果的です。例えば、「このサイトで〇〇という商品を見つけてカートに入れてください」といった具体的な指示です。ただし、ユーザーを特定の行動に誘導するような表現は避け、あくまでユーザー自身の判断で操作できるような中立的な言葉遣いを心がけましょう。

タスクの数は、テスト時間やユーザーの集中力を考慮して、多すぎないように調整することが重要です。一般的には5〜8程度のタスクが適切とされています。

ステップ3:参加ユーザーの選定と募集

ユーザビリティテストの成果は、適切な参加ユーザーを選定できるかどうかに大きく左右されます。テストの目的に合致する、実際のターゲットユーザー(ペルソナ)に近い属性の人を選びましょう。

ユーザーの選定基準としては、年齢、性別、Webリテラシー、特定のサービス利用経験の有無などが挙げられます。これらの属性を明確にした上で、社内協力者、既存顧客、SNSでの募集、外部の調査パネルサービスなどを活用して参加者を募ります。

募集の際には、スクリーニング質問を設けて、本当に目的に合ったユーザーであるかを確認することが重要です。参加人数は、一般的に5人程度で多くの問題点を発見できると言われています。ただし、属性が異なるユーザー層をテストしたい場合は、それぞれの層で5人ずつといった形で複数回テストを行うのが理想的です。

ステップ4:テストの実施とデータ収集

準備が整ったら、いよいよテストの実施です。テスト当日は、ユーザーがリラックスして臨めるような環境を整えましょう。モデレーター(進行役)は、ユーザーにテストの目的を説明し、発言を促しつつも、決して操作に介入せず、あくまで「観察者」に徹することが重要です。

ユーザーがタスクをこなす様子を注意深く観察し、どこで迷っているか、どのような発言をしているかを記録します。データの記録方法としては、ユーザーの画面操作を録画する、ユーザーの発言を記録する(発話プロトコル法)、モデレーターがメモを取る、といった方法があります。可能であれば、複数の記録方法を組み合わせることで、より多角的な情報を収集できます。

テスト中は、ユーザーが困っているように見えても、すぐに助け舟を出さずに、なぜその行動を取ったのか、何を考えているのかを質問する姿勢が大切です。

ステップ5:結果の分析と改善策の立案

テストで収集したデータは、生の声や行動の記録であり、そのままでは単なる情報の羅列に過ぎません。これらのデータを整理し、分析することで、Webサイトやアプリケーションの具体的な問題点や改善の機会を特定します。

まず、各ユーザーがどのタスクでつまずいたか、どのようなエラーが発生したか、完了までにどのくらいの時間がかかったかなどを一覧にまとめましょう。次に、複数のユーザーに共通して見られた問題点や、特に重大だと考えられる課題を抽出します。これらの問題点に対して、なぜそれが起こったのか、その根本原因は何かを深く掘り下げて分析します。

分析結果に基づいて、具体的な改善策を立案し、その改善策がユーザー体験やビジネス目標にどのように貢献するかを明確にします。提案する改善策には優先順位をつけ、開発チームや関係者と共有し、実際の改修へと繋げていきましょう。単なる問題発見で終わらせず、改善アクションまで落とし込むことが、ユーザビリティテストの真の価値です。

ユーザビリティテストを成功させるためのポイント

ユーザビリティテストは、ただ実施すれば良いというものではありません。より有益な結果を得て、具体的な改善に繋げるためには、いくつかの重要なポイントを押さえる必要があります。ここでは、テストの質を高め、成功へと導くための実践的なヒントをご紹介します。

目的を明確にする

ユーザビリティテストを開始する前に、「このテストで何を明らかにしたいのか」という問いに明確に答えられるよう、具体的な目的を設定することが非常に重要です。目的が曖昧なままテストを進めてしまうと、得られた結果の分析が困難になったり、どの改善策を優先すべきか判断できなかったりする可能性があります。

例えば、「Webサイトの使いやすさを向上させたい」という漠然とした目的ではなく、「新規登録フォームの完了率が低い原因を特定したい」「特定機能へのアクセス経路でユーザーが迷っている箇所を見つけたい」といった具体的な課題を設定することで、テスト設計から分析、改善策の立案までの一貫性が保たれ、より的確な結果を得られるようになります。

ターゲットユーザーを正しく選ぶ

テストの信頼性を高めるためには、製品やサービスの実際の利用者、あるいはターゲットとなる層に近いユーザーを選定することが不可欠です。例えば、若年層向けのSNSアプリを開発しているのに、普段インターネットをあまり利用しない高齢者を被験者として選んでしまっては、適切なフィードバックは得られません。

ターゲットユーザーの属性(年齢、性別、職業、インターネット利用頻度、特定のサービス利用経験など)を明確にし、その属性に合致する人を選びましょう。誤ったユーザー選定は、テスト結果の信頼性を著しく損ない、誤った改善へと導くリスクがあるため、慎重に実施する必要があります。

ユーザーが自然に操作できるタスクを作る

ユーザビリティテストにおけるタスク設計は、ユーザーの自然な行動を引き出す上で非常に重要です。現実の使用状況を反映した、具体的かつ自然なタスクを設定するよう心がけましょう。

例えば、「このボタンをクリックしてください」といった誘導的な指示や、「ログイン機能を使ってみてください」のような抽象的なタスクは避けるべきです。「あなたが初めてこのサイトを訪れたとして、特定の情報を見つけるにはどうしますか?」や「友人にこの商品を勧めたい場合、どのように情報を共有しますか?」といった、ユーザーが自ら思考し行動できるようなシナリオを設定することで、よりリアルな課題を発見しやすくなります。専門用語を避け、誰にでも理解できる平易な言葉でタスクを記述することも大切です。

観察と傾聴を徹底する

テスト実施中のモデレーター(進行役)の役割は、ユーザーの行動を注意深く観察し、発言に耳を傾けることです。ユーザーが戸惑っている様子や、意図しない操作をしている瞬間を見逃さず、その理由や思考プロセスを理解しようと努めましょう。

ただし、ユーザーを誘導するような質問は避けてください。「これは使いにくいですか?」と聞くのではなく、「今、何を考えていましたか?」「なぜその操作をしようと思いましたか?」といった、ユーザーの自然な反応や感情を引き出すオープンな質問を心がけましょう。ユーザーの言葉だけでなく、表情、視線の動き、マウスの動きなど、非言語的な情報からも多くのヒントが得られます。

分析結果を具体的なアクションに繋げる

ユーザビリティテストで得られた知見は、単なる報告書で終わらせては意味がありません。テスト結果を具体的なUI/UX改善案や開発計画へと落とし込むプロセスが最も重要です。

収集したデータや観察結果を整理し、ユーザーが抱えた問題点や課題を明確にします。その上で、どの問題を優先的に解決すべきか、改善の緊急度や影響度に基づいて優先順位をつけましょう。例えば、「タスク完了率が著しく低い箇所」「多くのユーザーが共通して迷った箇所」などは優先度が高いと判断できます。

また、改善案は具体的なデザイン変更や機能追加として提示し、開発チームや関係者と共有することが大切です。可能であれば、改善後のプロトタイプやモックアップを再度テストし、効果を検証する「イテレーション(反復)」のプロセスを取り入れることで、ユーザー体験を継続的に向上させることができます。

ユーザビリティテストに役立つツール・サービス紹介

ユーザビリティテストを効率的に実施し、より深い洞察を得るためには、適切なツールやサービスの活用が不可欠です。ここでは、予算や目的に応じて選べる、様々なツールやサービスをご紹介します。

無料で使えるツール

予算が限られている場合でも、手軽にユーザビリティテストを開始できる無料ツールは多数存在します。これらを組み合わせることで、基本的なテストは実施可能です。

  • ビデオ会議ツール(Google Meet, Zoomなど): リモートでの対面テストを実施する際に、被験者の画面共有や表情の観察、会話の録画に利用できます。参加者とのコミュニケーションを通じて、リアルタイムでフィードバックを得られます。
  • アンケートツール(Google Forms, Microsoft Formsなど): テスト後のユーザーの満足度や特定のタスクに対する主観的な評価を収集するのに役立ちます。また、簡単なタスク完了の有無を確認する際にも活用できます。
  • 画面録画・キャプチャツール(OBS Studio, スクリーンショット機能など): 被験者の操作画面を録画し、後から操作の流れや迷った箇所を詳細に分析できます。OS標準の機能でも簡易的な録画が可能です。
  • ヒートマップ・アクセス解析ツール(Google Analytics, Microsoft Clarityなど): Webサイトのどこがよく見られているか、どこでクリックされているかなどを視覚的に把握できます。無料プランでも基本的な分析が可能で、テスト前の仮説構築やテスト後の行動検証に役立ちます。

これらの無料ツールは手軽に始められる反面、高度な分析機能や参加者管理機能は限定的です。本格的なテストを継続的に行う場合は、有料ツールの導入も検討すると良いでしょう。

有料のツール・サービス

より体系的かつ効率的にユーザビリティテストを実施し、専門的な分析を行いたい場合は、有料の専門ツールや外部の専門サービスが有効です。

  • UserTesting: 世界的に有名なユーザビリティテストプラットフォームです。ターゲットユーザーの募集からテスト設計、動画でのフィードバック収集、分析まで一貫して行えます。多様なユーザー属性に対応し、質の高いインサイトを素早く得られるのが特徴です。
  • Lookback: リモートでのライブユーザビリティテストに特化したツールです。参加者の画面共有、カメラ映像、マイク音声をリアルタイムで記録・観察でき、チームメンバーとの共同観察やチャット機能も充実しています。
  • Maze: プロトタイプや既存のプロダクトに対して、ユーザーテストを迅速に実施できるツールです。タスク完了率、エラー率、ヒートマップなど、定量的なデータを自動で収集・分析してくれます。ノーコードでテスト設計が可能なため、手軽に始められます。
  • 外部の専門企業によるテストサービス: 自社でのリソースが不足している場合や、より客観的で専門的な知見を求める場合に有効です。テストの企画から実施、分析、改善提案までをプロに任せることができます。費用は高くなりますが、専門家による質の高い結果と具体的な改善策を得られるメリットがあります。

有料ツールやサービスを選ぶ際は、自社のテスト頻度、必要な機能、予算、そして何よりも「どのようなインサイトを得たいか」を明確にして比較検討することが重要です。無料トライアルを活用して使い勝手を確認するのも良い方法でしょう。

ユーザビリティテストの事例紹介

抽象的な説明だけでなく、実際の事例を通じてユーザビリティテストの効果や重要性を具体的に理解することは、実践において非常に役立ちます。成功事例から得られる示唆と、失敗事例から学ぶべき教訓を明確に把握し、自社のプロジェクトに活かしていきましょう。

成功事例

ユーザビリティテストは、多くの企業でWebサイトやアプリケーションの改善に貢献し、具体的なビジネス成果をもたらしています。ここでは、いくつかの成功事例をご紹介します。

事例1:大手ECサイトの購入フロー改善 ある大手ECサイトでは、カートに商品が入るものの、最終的な購入完了に至らないユーザーが多いという課題を抱えていました。ユーザビリティテストを実施した結果、購入手続きの途中で表示される配送オプションの選択肢が多すぎること、また、支払い方法の入力画面が複雑であることが判明しました。 この結果を受けて、配送オプションをデフォルトで推奨設定を設け、支払い画面の入力項目を削減し、視覚的な誘導を強化したところ、購入完了率が15%向上し、顧客満足度も大幅に改善しました。

事例2:SaaS型プロジェクト管理ツールのオンボーディング改善 新規ユーザーの定着率向上に課題を抱えていたSaaS企業は、オンボーディングプロセス(初回利用時の導入手順)についてユーザビリティテストを行いました。テストの結果、初期設定の手順が分かりにくく、ツールの主要機能を体験する前に離脱してしまうユーザーが多いことが明らかになりました。 そこで、チュートリアルを動画形式に変更し、ステップごとに進捗バーを表示するなどの改善を実施。これにより、新規ユーザーの30日後の継続利用率が20%アップし、サポートへの問い合わせ件数も減少しました。

事例3:銀行アプリの送金機能の改善 ある銀行のモバイルアプリでは、ユーザーからの「送金機能が使いにくい」というフィードバックが多数寄せられていました。ユーザビリティテストでユーザーの操作を観察したところ、送金先の選択、金額入力、認証の各ステップで、ユーザーが迷ったり、誤操作したりする場面が頻繁に見られました。 テスト結果に基づき、送金先の履歴表示を強化し、金額入力時にテンキーを自動表示、さらに認証プロセスを簡素化する改修を行いました。結果として、送金機能の利用頻度が向上し、ユーザー満足度調査でも高い評価を得ることに成功しました。

これらの事例からわかるように、ユーザビリティテストはユーザーがどこでつまずいているのかを具体的に特定し、的確な改善へと導く強力な手段となります。

失敗事例から学ぶこと

ユーザビリティテストは強力な手法ですが、実施方法を誤ると期待する成果が得られないばかりか、誤った改善へとつながる可能性もあります。ここでは、失敗事例とその原因、そこから学ぶべき教訓を紹介します。

事例1:ターゲットユーザーの選定ミス あるBtoBサービスの開発チームは、新機能のユーザビリティテストを実施しました。しかし、テストに参加したのは、そのサービスに精通した社内メンバーや開発関係者ばかりでした。結果として、テストはスムーズに進み、「問題なし」と判断されましたが、実際にリリースすると、本来のターゲットである新規顧客からは「使い方が分からない」という問い合わせが殺到しました。 教訓: ユーザビリティテストは、必ず実際のターゲットユーザーに近い属性の参加者を選定することが重要です。社内メンバーでは、既にサービスに慣れてしまっているため、ユーザーの視点に立つことが困難です。

事例2:タスク設計の不備 新しいECサイトの決済プロセスのテストで、「このサイトで何か商品を購入してください」という漠然としたタスクが与えられました。参加者はそれぞれ異なる商品を検索し、購入を試みましたが、結果として得られたデータは多岐にわたり、どのステップで共通の課題があるのかを特定することが困難でした。 教訓: タスクは具体的かつ測定可能であるべきです。「〇〇という商品を検索し、カートに入れ、支払い方法をクレジットカードで指定して購入を完了してください」のように、明確なゴールと手順を示すことで、ユーザーの行動を比較しやすくなります。

事例3:観察のみで改善策につながらない あるWebサイトのリニューアル後、ユーザーが特定のページで長時間滞在していることがテストで判明しました。しかし、単に「滞在時間が長い」という事実だけで、なぜユーザーがそこにいるのか、何を探しているのか、困っているのかといった深掘りがなく、具体的な改善策に結びつきませんでした。 教訓: ユーザーの行動を観察するだけでなく、「なぜその行動を取ったのか」「何を考えていたのか」をユーザーに直接質問する「発話プロトコル」などの手法を組み合わせることが重要です。単なる行動の羅列ではなく、行動の背景にあるユーザーの意図を理解することで、本質的な改善策が見えてきます。

これらの失敗事例から、ユーザビリティテストは「誰に」「何を」「どのように」テストするかが成果を大きく左右することがわかります。事前の計画と準備を徹底し、目的に応じた適切な手法を選択することが成功への鍵です。

よくある質問:ユーザビリティテストについて

ユーザビリティテストの実施を検討する際、多くの担当者の方が抱くであろう具体的な疑問について、Q&A形式で解説します。

ユーザビリティテストはどれくらいの頻度で行うべき?

ユーザビリティテストの適切な頻度は、製品やサービスの開発段階、変更の規模、予算などによって異なります。一般的には、以下のようなタイミングでの実施が推奨されます。

  • 開発初期・プロトタイプ段階: 新規機能や大幅な改修を行う際、開発の早い段階でテストを実施することで、手戻りを最小限に抑えられます。
  • 主要な機能追加・改善時: 新しい機能がリリースされる前や、既存機能に大きな変更を加える際に、ユーザーの反応を確認します。
  • 定期的な見直し: 特に大きな変更がなくても、四半期に一度や半年に一度など、定期的にテストを実施し、ユーザー行動の変化や競合の動向に対応します。
  • アジャイル開発: 短いサイクルで開発を進めるアジャイル開発では、各スプリントの終わりや、重要なマイルストーンごとに小規模なテストを継続的に行うことで、常にユーザーからのフィードバックを取り入れられます。

「少量のテストを頻繁に行う」ことが、継続的な改善には効果的とされています。

誰が担当するのが良い?

ユーザビリティテストの担当者は、その目的や規模によって多様です。

  • UXデザイナー・UIデザイナー: ユーザー体験やインターフェースの専門家として、テストの企画から実施、分析、改善提案までを一貫して担当するケースが多いです。
  • プロダクトマネージャー: 製品全体の方向性を決定する立場から、ユーザーの課題を深く理解するためにテストを主導することがあります。
  • 開発者(エンジニア): 自身が開発した機能の使いやすさを直接確認することで、ユーザー視点での改善意識を高められます。
  • マーケター: ユーザーの行動やニーズを把握し、製品の訴求力向上やコンバージョン率改善のためにテストに関わります。

社内に専門知識を持つ人材がいない場合や、より客観的な視点が欲しい場合は、外部の専門家(UXコンサルタント、リサーチャーなど)に依頼することも有効な選択肢です。

社内実施と外部委託、どちらが良い?

ユーザビリティテストを社内で実施するか、外部の専門企業に委託するかは、それぞれメリット・デメリットがあります。

項目社内実施外部委託
コスト低い(人件費やツールの利用料が主)高い(専門の人件費やサービス利用料がかかる)
迅速性高い(スケジュールの調整がしやすい)低い場合がある(外部との調整が必要)
客観性低い(開発者の思い込みが入りやすい)高い(第三者の視点が得られる)
専門性社内のスキルレベルに依存する高い(専門知識や経験が豊富)
リソース社内メンバーの工数が必要外部に任せられるため、社内リソースの負担が少ない
内部知識製品や事業への深い理解がある製品や事業への理解を深めるための説明が必要

社内実施が向いているケース

  • 予算が限られている場合
  • 迅速なフィードバックが必要な場合
  • 開発メンバー自身がユーザー視点を養いたい場合
  • 小規模な改善や継続的なテストを行いたい場合

外部委託が向いているケース

  • より客観的で専門的な知見が必要な場合
  • 大規模なテストや複雑な分析が必要な場合
  • 社内リソースが不足している、または専門人材がいない場合
  • 重要な意思決定を伴うような、信頼性の高いデータが求められる場合

どちらの方法にも一長一短があるため、テストの目的や予算、求める品質に応じて最適な方法を選択することが重要です。

まとめ:ユーザビリティテストでユーザー体験を向上させよう

この記事では、ユーザビリティテストの基本的な概念から、その種類、実施のメリット・デメリット、そして具体的な5つのステップにわたる進め方までを詳しく解説しました。また、テストを成功させるためのポイントや、役立つツール・サービス、さらには成功事例や失敗事例から学ぶべき教訓もご紹介しました。

ユーザビリティテストは、Webサイトやアプリケーションの真の使いやすさを客観的に評価し、ユーザーの抱える課題やニーズを深く理解するための非常に強力な手法です。単に「使いやすいだろう」という思い込みではなく、実際のユーザーの行動やフィードバックに基づいた改善を繰り返すことで、ユーザー体験(UX)は確実に向上します。

ユーザー体験の向上は、結果としてユーザー満足度の向上、コンバージョン率の改善、離脱率の低下といったビジネス成果に直結します。ぜひ、この記事で得た知識を活かし、あなたのWebサイトやアプリケーションでユーザビリティテストを実践してみてください。ユーザーの視点に立ち、継続的な改善を行うことが、成功への鍵となるでしょう。

お問い合わせはこちら

この記事の監修者

脇村 隆

1997年のインターネット黎明期よりWeb制作に従事。イニット(現・トランスコスモス)、ぴあデジタルコミュニケーションズ、NRIネットコム等にて、HTMLコーダー、ディレクター、プロデューサー、コンサルタントとして大手企業Webサイト構築の上流から下流まで一貫して担当。
コーポレート/サービス/金融機関サイトの再設計や情報設計を軸に、自然検索からの集客向上とCV改善を多数実現。2012年にプラス・ムーブメント合同会社を設立し、14期目を迎える現在もWebサイト制作・PR支援を展開。商工会・自治体をはじめ公的機関案件を12年連続で継続支援し、運用内製化や業務効率化(kintone等)まで伴走。
単著『アフィリエイターのためのWeb APIプログラミング入門』をはじめ、各種セミナー登壇多数。GUGA 生成AIパスポート(2025年6月取得)を保有。
現在は「AIミライデザイナー」代表として、戦略立案からWebサイト実装・SEO対策、集客後のAI・DX推進までを伴走型でワンストップ提供。