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【保存版】ユーザビリティの基本から実践まで|定義・評価・改善の完全ガイド

【保存版】ユーザビリティの基本から実践まで|定義・評価・改善の完全ガイド

「Webサイトやアプリの使い勝手が悪い…」「どうすればもっとユーザーに喜んでもらえるだろう?」

もしあなたが、このような課題を感じているなら、この記事はきっとお役に立てるはずです。なぜなら、ユーザーが「使いやすい」と感じる体験を提供する「ユーザビリティ」こそが、Webサイトやアプリの成功を左右する鍵だからです。

この記事では、ユーザビリティの基本的な定義から、それがなぜビジネスに不可欠なのか、そして具体的な評価方法や実践的な改善テクニックまで、網羅的に解説します。読了後には、あなたのWebサイトやアプリのユーザビリティを向上させ、ユーザー満足度とビジネス成果の向上に繋げるための確かな知識と自信が得られるでしょう。

ユーザビリティとは?定義とUI/UXとの違い

Webサイトやアプリを開発・運用する上で、「ユーザビリティ」という言葉は頻繁に耳にするでしょう。しかし、「使いやすさ」という漠然としたイメージだけでなく、その本質的な意味を理解することが重要です。

ユーザビリティとは、国際標準化機構(ISO)が定めるISO 9241-11において、「特定の利用状況において、特定のユーザーが、ある製品を、どれだけ効果的に、効率的に、そして満足できるか」という観点から定義されています。簡単に言えば、ユーザーが迷うことなく目的を達成でき、ストレスなく快適に利用できる度合いを指します。

このユーザビリティと混同されやすい概念として、「UI(ユーザーインターフェース)」と「UX(ユーザーエクスペリエンス)」があります。これらは密接に関連していますが、それぞれ異なる側面を持つため、その違いを理解することが大切です。

  • UI(User Interface:ユーザーインターフェース) UIは、ユーザーと製品(Webサイトやアプリなど)が接する「接点」すべてを指します。具体的には、画面のデザイン、ボタン、アイコン、フォント、色使い、レイアウトなど、視覚的に見えるものや操作するものがUIの要素です。いかに美しく、直感的に操作できるデザインになっているかが問われます。
  • UX(User Experience:ユーザーエクスペリエンス) UXは、ユーザーが製品やサービスを通じて得られる「あらゆる体験」を指します。これは、製品を使う前の期待感から、実際に使っている間の感情、そして使い終わった後の印象まで、一連のプロセス全体を含みます。UIやユーザビリティはUXを構成する要素の一部であり、UXはより広範な概念です。

つまり、UIは「見た目や操作部分」、ユーザビリティは「使いやすさ(目的達成のしやすさ)」、UXは「体験全体」と捉えることができます。例えば、美しいUI(見た目)のアプリがあったとしても、操作が複雑で目的が達成しにくい(ユーザビリティが低い)場合、ユーザーは不満を感じ、全体的なUXは悪くなってしまいます。

項目ユーザビリティUIUX
定義特定のユーザーが製品を効果的、効率的、満足して利用できる度合いユーザーと製品の接点(見た目や操作部分)ユーザーが製品やサービスを通じて得られるあらゆる体験
焦点「使いやすさ」「目的達成のしやすさ」「見た目の美しさ」「操作のしやすさ」「感情」「満足度」「期待」など、体験全体
具体例ボタンの配置が分かりやすい、エラーメッセージが親切ボタンの色、フォント、アイコンのデザイン、レイアウト製品を使うことで得られる楽しさ、感動、問題解決の満足感
関係性UIの一部であり、UXを構成する重要な要素UXを構成する要素の一つであり、ユーザビリティに影響するUIやユーザビリティを含む、最も広範な概念

この表からもわかるように、ユーザビリティ、UI、UXはそれぞれ異なる概念でありながら、互いに深く関連し合っています。優れたUXを提供するためには、魅力的で操作しやすいUIと、ユーザーがストレスなく目的を達成できる高いユーザビリティが不可欠なのです。

なぜユーザビリティが重要なのか?ビジネスにおけるメリット

ユーザビリティは単なる「使いやすさ」にとどまらず、Webサイトやアプリのビジネス成果に直結する非常に重要な要素です。ユーザーがストレスなく目的を達成できることは、企業の収益向上、顧客ロイヤルティの構築、そしてブランドイメージの確立に大きく貢献します。ここでは、ユーザビリティがビジネスにもたらす具体的なメリットについて解説します。

コンバージョン率(CVR)の向上

ユーザビリティが高いWebサイトやアプリは、ユーザーが求める情報にたどり着きやすく、目標とする行動(購入、会員登録、資料請求、問い合わせなど)をスムーズに完了できます。例えば、ECサイトで商品の検索から購入までの導線が明確で、フォーム入力が簡単であれば、ユーザーは迷うことなく購入を決定するでしょう。これにより、サイト訪問者が実際に成果に繋がる行動を起こす割合であるコンバージョン率(CVR)が向上し、直接的な売上増に貢献します。

離脱率の低下

使いにくいWebサイトやアプリは、ユーザーにストレスを与え、すぐに他のサイトへ移動してしまう原因となります。複雑なナビゲーション、遅い表示速度、分かりにくいコンテンツなどは、ユーザーの忍耐力を奪い、結果として高い離脱率に繋がります。しかし、ユーザビリティが確保されていれば、ユーザーは快適にサイト内を回遊し、より長く滞在する傾向があります。ストレスのない体験は、ユーザーがサイトから離れるのを防ぎ、結果としてサービスの利用時間を延ばし、エンゲージメントを高めることに繋がります。

顧客満足度とロイヤルティの向上

快適なユーザー体験は、顧客の満足度を大きく高めます。使いやすく、期待通りの機能を提供するWebサイトやアプリは、ユーザーにとって「良いサービス」という印象を与え、ポジティブな感情を育みます。この満足感は、単なる一時的な利用で終わらず、リピート利用へと繋がり、さらには友人や知人への口コミを促進します。長期的に見れば、顧客ロイヤルティの向上は安定した収益基盤を築き、企業の持続的な成長を支える重要な要素となります。

ブランドイメージの向上

ユーザビリティの高いサービスは、企業やブランドに対してポジティブなイメージを与えます。ユーザーは、使いやすい製品やサービスを提供する企業に対し、「顧客のことを考えている」「プロフェッショナルである」「信頼できる」といった印象を抱きます。これは、単なる製品・サービスの品質だけでなく、企業全体の信頼性や価値を高めることに直結します。競合他社が多い現代において、優れたユーザビリティは強力な差別化要因となり、ブランドの市場における存在感を強化する上で不可欠な要素と言えるでしょう。

ユーザビリティを評価する方法

Webサイトやアプリのユーザビリティを客観的に把握し、改善へと繋げるためには、適切な評価方法を用いることが不可欠です。評価方法には多岐にわたる種類があり、それぞれ目的や得られる情報、必要なリソースが異なります。主に定量的なデータを得る手法と、定性的なユーザーの意見や行動を深く理解する手法に大別されます。

ここでは、代表的な評価方法の概要をご紹介します。これらの手法を適切に組み合わせることで、多角的にユーザビリティの課題を発見し、効果的な改善策を導き出すことが可能になります。

ユーザビリティテスト

ユーザビリティテストとは、実際にユーザーにWebサイトやアプリを使ってもらい、その行動を観察・分析することで、潜在的な問題点や改善点を発見する評価手法です。ユーザーの生の声や具体的な行動を直接確認できるため、他の評価方法では見つけにくい本質的な課題を特定できるのが大きな特徴です。

ユーザビリティテストの実施手順

ユーザビリティテストを効果的に実施するためには、以下のステップを踏むことが重要です。

  1. テスト計画の策定
    • 目的設定: 「購入完了率の向上」「特定の機能の理解度向上」など、テストを通じて何を明らかにしたいのかを具体的に設定します。
    • ターゲットユーザーの定義: 誰にテストを受けてもらいたいのか(年齢、性別、職業、経験など)を明確にします。
    • タスクシナリオの作成: ユーザーにどのようなタスク(例:「このECサイトで〇〇という商品を検索し、購入手続きを完了してください」)を実行してもらうかを具体的に記述します。タスクは現実的で、目的達成に必要な行動を網羅するように設計します。
    • 評価項目の設定: ユーザーの行動のどこに注目するか(例:タスク完了時間、エラー発生回数、発言内容)を明確にします。
  2. 参加者の募集
    • 定義したターゲットユーザーに合致する参加者を募集します。友人・知人、社内関係者、専門のリクルートサービスなどを活用します。一般的には5名程度の参加者で、ほとんどの主要な問題点を発見できるとされています。
  3. テストの実施
    • モデレーターの準備: テストを進行するモデレーターは、参加者に寄り添い、自然な発話を促すスキルが必要です。タスクの説明、質問、沈黙への対応などを練習しておきましょう。
    • 環境設定: テストルーム、PC、録画・録音機材などを準備します。リモートテストの場合は、オンライン会議ツールや画面共有・録画ツールを用意します。
    • データ収集: ユーザーの画面操作、発言、表情などを録画・録音し、モデレーターは気になった点をメモします。タスク完了時間やエラー発生箇所なども記録します。
  4. データの分析と改善提案
    • 収集したデータをもとに、ユーザーがどこでつまずいたのか、なぜその行動を取ったのかを詳細に分析します。
    • 発見された問題点をリストアップし、その深刻度や発生頻度に応じて優先順位をつけます。
    • 問題点ごとに具体的な改善策を検討し、レポートとしてまとめます。

ユーザビリティテストの種類

ユーザビリティテストには、実施方法や目的によっていくつかの種類があります。

  • モデレート型テスト: モデレーターがテスト中に参加者と対話し、質問をしたり、行動の意図を確認したりしながら進行します。ユーザーの心理や背景を深く理解できるメリットがありますが、モデレーターのスキルが結果を左右します。対面またはリモートで実施されます。
  • 非モデレート型テスト: 事前に設定されたタスクを参加者が一人で実行し、その様子が自動的に記録されます。モデレーターが介入しないため、より自然な環境での行動を観察できます。多数の参加者からデータを収集しやすく、比較的低コストで実施できますが、ユーザーの「なぜ?」を深掘りすることは難しいです。
  • 定性テスト: 少数のユーザーから詳細なフィードバックや行動の背景を収集し、具体的な問題点や改善のヒントを見つけることを目的とします。
  • 定量テスト: 大規模なユーザーグループからデータを収集し、特定のタスクの完了率や時間、エラー率などの数値データを分析することで、デザイン変更の効果測定や全体的な傾向を把握することを目的とします。

ユーザビリティテストのメリット・デメリット

ユーザビリティテストは強力な評価手法ですが、メリットとデメリットを理解して活用することが重要です。

メリット

  • 直接的な問題発見: ユーザーが実際に製品を使用する様子を観察するため、開発者が気づきにくい具体的な問題点や潜在的なニーズを直接発見できます。
  • ユーザーの生の声: ユーザーの思考プロセスや感情、行動の背景にある「なぜ?」を、発言や表情から深く理解できます。
  • 客観的な評価: ユーザーの行動データに基づいて評価するため、主観的な意見に偏らず、客観的な改善提案が可能です。
  • 改善の優先順位付け: どの問題がユーザー体験に最も大きな影響を与えているかを特定しやすいため、効果的な改善策にリソースを集中できます。

デメリット

  • コストと時間: 参加者の募集、テスト環境の準備、実施、データ分析に時間と費用がかかります。
  • 参加者募集の難しさ: 適切なターゲットユーザーを確保するのが難しい場合があります。
  • 結果の解釈: 収集したデータを正しく分析し、具体的な改善策に落とし込むには専門知識が必要です。
  • 代表性の限界: 少数の参加者でのテストでは、全てのユーザー層の問題を網羅できない可能性があります。

ヒューリスティック評価

ヒューリスティック評価とは、ユーザビリティの専門家が、あらかじめ定められた経験則(ヒューリスティックス)に基づいてWebサイトやアプリケーションのインターフェースを評価する手法です。この評価方法は、短時間で多くのユーザビリティ上の問題点を発見できるため、開発サイクルの初期段階や、予算や時間の制約がある場合に特に有効です。

専門家が評価を行うことで、ユーザーテストでは見落とされがちな潜在的な問題点も発見しやすくなります。中でも、ヤコブ・ニールセン氏が提唱した「ニールセンの10原則」は、最も広く知られ、活用されているヒューリスティックスの一つです。

ニールセンの10原則と適用例

ニールセンの10原則は、ユーザーインターフェース設計における普遍的なガイドラインとして機能します。これらの原則を理解し適用することで、ユーザーにとってより直感的で使いやすい製品をデザインすることが可能になります。

  1. システム状態の可視性(Visibility of system status) システムは常に適切なフィードバックを通じて、ユーザーに何が起こっているかを知らせるべきです。
    • 適用例: ファイルのアップロード時に進捗バーを表示する、ボタンクリック後にローディングアニメーションを表示する、フォーム送信後に「送信完了」メッセージを表示する。
  2. 実世界との合致(Match between system and the real world) システムはユーザーの言葉や概念を使い、実世界の慣習に沿って情報を整理するべきです。
    • 適用例: ゴミ箱アイコンで削除機能を表す、現実世界のカレンダーに似たUIで日付選択機能を提供する、専門用語ではなく一般的な言葉を使う。
  3. ユーザーによる制御と自由(User control and freedom) ユーザーは意図せず誤った操作をした場合でも、簡単に元に戻せる自由を持つべきです。
    • 適用例: 「元に戻す(Undo)」機能、操作を取り消す「キャンセル」ボタン、削除後の「復元」機能。
  4. 一貫性と標準(Consistency and standards) 同じ状況では同じ言葉、状況、アクションを使用し、プラットフォームの慣習に従うべきです。
    • 適用例: ナビゲーションメニューの配置を一貫させる、同じ機能には常に同じアイコンを使用する、ボタンの色や形状を機能によって統一する。
  5. エラーの防止(Error prevention) ユーザーがエラーを起こしにくいように、デザイン段階で問題を未然に防ぐべきです。
    • 適用例: フォーム入力時に必須項目を明示する、パスワード設定時に強度条件を表示する、削除前に確認ダイアログを表示する。
  6. 認識より再認(Recognition rather than recall) ユーザーに情報を記憶させるのではなく、選択肢を提示することで、認識を促すべきです。
    • 適用例: プルダウンメニューで選択肢を表示する、最近検索したキーワードを履歴として表示する、アイコンとテキストを併用して機能を示す。
  7. 柔軟性と効率性(Flexibility and efficiency of use) 初心者から上級者まで、さまざまなユーザーが効率的に操作できるよう、柔軟な機能を提供すべきです。
    • 適用例: ショートカットキーの提供、カスタマイズ可能なツールバー、検索フィルターの複数設定。
  8. 美的で最小限のデザイン(Aesthetic and minimalist design) インターフェースは不必要な情報で過負荷にせず、必要な情報に焦点を当てるべきです。
    • 適用例: 無駄な装飾を避ける、重要な情報とそうでない情報を視覚的に区別する、シンプルでクリーンなレイアウト。
  9. ユーザーがエラーを認識、診断、回復できるように支援(Help users recognize, diagnose, and recover from errors) エラーが発生した際には、何が問題でどうすれば解決できるのかを分かりやすく伝えるべきです。
    • 適用例: エラーメッセージで具体的な問題点と解決策を提示する、入力ミスがあったフィールドを赤枠で囲む、問い合わせ先を明記する。
  10. ヘルプとドキュメンテーション(Help and documentation) システムは、分かりやすいヘルプやドキュメンテーションを提供すべきですが、理想的にはそれが不要なほど直感的なデザインを目指すべきです。
    • 適用例: FAQページ、ツールチップによる機能説明、チュートリアル動画。

アンケート調査・インタビュー

アンケート調査やインタビューは、ユーザーの主観的な意見や感情、行動の背景を深く理解するための定性的な評価手法です。ユーザーが「なぜそう感じたのか」「なぜその行動をとったのか」といった深層心理を探る上で非常に有効であり、定量的なデータだけでは見えにくい課題の発見に繋がります。

アンケート調査の設計と実施

効果的なアンケート調査を実施するためには、質問項目の選定から回答形式の工夫、回答者層のターゲティングまで、戦略的な設計が不可欠です。

まず、アンケートの目的を明確にし、知りたい情報を具体的に洗い出しましょう。その上で、以下のようなポイントに注意して質問を作成します。

  • 質問項目の選定: ユーザーの行動や感情、ニーズに関する質問を中心に、簡潔で分かりやすい言葉を選びます。一度に多くの情報を聞こうとせず、各質問の目的を明確にしましょう。
  • 回答形式の工夫: 選択式(単一・複数)、自由記述、スケール形式(5段階評価など)など、質問内容に適した形式を選びます。自由記述は貴重な意見が得られますが、分析の手間も考慮が必要です。
  • 回答者層のターゲティング: 誰の意見を聞きたいのかを明確にし、適切なチャネル(Webサイト内、メール、SNS広告など)を通じて回答を募ります。
  • バイアスを避ける: 特定の回答に誘導するような質問や、専門用語の多用は避け、中立的な表現を心がけましょう。また、質問の順番によって回答に影響が出ないよう配慮することも大切です。

GoogleフォームやSurveyMonkeyなどのツールを活用することで、手軽にアンケートを作成・配布し、データ収集を行うことができます。

インタビューの実施とデータ分析

インタビューは、ユーザーと直接対話することで、アンケートでは得られない深い洞察や行動の背景を引き出すことができる強力な手法です。

  • スクリーニング: インタビュー対象者の条件を明確にし、適切なユーザーを選定します。
  • 質問リストの作成: インタビューの目的を達成するための質問リストを事前に作成しますが、あくまでガイドとして柔軟に対応できるよう準備します。
  • モデレートスキルと深掘り質問: インタビュアー(モデレーター)は、ユーザーが話しやすい雰囲気を作り、適度な相槌や「なぜそう思いましたか?」「具体的にどのような状況でしたか?」といった深掘り質問で、本音や隠れたニーズを引き出すスキルが求められます。
  • 発言の記録: ユーザーの発言は、録音やメモで正確に記録します。後で分析する際に重要な情報となるため、許可を得た上で記録しましょう。

得られたインタビューデータは、発言のキーワードを抽出し、共通するパターンや意見、感情を分類することでインサイトを導き出します。ユーザーの課題やニーズ、行動の動機を可視化する「共感マップ」などを活用するのも有効です。ユーザーの言葉の裏にある「なぜ?」を掘り下げ、真の課題を特定することが、ユーザビリティ改善の第一歩となります。

主要な指標と読み解き方

アクセス解析ツールは、Webサイトやアプリのユーザビリティ上の問題点を発見するための宝庫です。特に以下の指標は、ユーザー行動を理解し、改善点を見つける上で非常に役立ちます。

  • 離脱率: 特定のページを最後にサイトから離れたセッションの割合です。高い離脱率は、そのページの内容がユーザーの期待と異なっていたり、次の行動への導線が不明確だったりする可能性を示唆します。
  • 直帰率: サイトに訪問して最初の1ページだけを見て離脱したセッションの割合です。ランディングページのコンテンツがユーザーの検索意図と合致していない、あるいはページが重く表示に時間がかかるといった問題が考えられます。
  • 平均セッション時間(滞在時間): ユーザーがサイトに滞在した平均時間です。短い滞在時間は、コンテンツの魅力不足や情報が見つけにくいといったユーザビリティの問題を示していることがあります。
  • コンバージョン率(CVR): 目標とする行動(購入、資料請求など)を達成したセッションの割合です。特定のページでのCVRが低い場合、フォームの入力しにくさやCTA(Call to Action)の分かりにくさなどが原因かもしれません。
  • イベントトラッキング: 特定のボタンクリック、動画再生、ファイルダウンロードなど、ユーザーが起こした特定の行動を計測するものです。これにより、ユーザーが意図した行動をとっているか、あるいはどこでつまずいているかを詳細に把握できます。

これらの指標を組み合わせることで、ユーザーがどこで迷い、どこで離脱しているのか、具体的な問題箇所を特定し、改善策を検討する手がかりとすることができます。

ヒートマップ・スクロールマップの活用

アクセス解析データだけでは見えにくいユーザーの「視線」や「関心」を可視化するのが、ヒートマップツールです。ヒートマップは、ユーザーがページのどの部分をよく見ているか(アテンションヒートマップ)、どこをクリックしたか(クリックヒートマップ)、どこまでスクロールしたか(スクロールマップ)を色で表現します。

  • クリックヒートマップ: ユーザーがクリックしている箇所と、クリックされていない箇所を明確に示します。クリックできない要素がクリックされている場合、ユーザーが誤解している可能性があります。
  • スクロールマップ: ページをどこまで読み進めたかを示します。重要な情報がスクロールせずに見えない位置(ファーストビューの下)にある場合、多くのユーザーに見落とされている可能性があります。

これらの情報を活用することで、「ユーザーはここに注目しているから、もっと情報を充実させよう」「この部分はほとんど見られていないから、配置を変えよう」といった具体的な改善策を立てることができます。アクセス解析データとヒートマップデータを組み合わせることで、より詳細なユーザー行動の分析と、効果的なユーザビリティ改善に繋げることが可能です。

ユーザビリティを向上させるための具体的なデザイン原則とテクニック

これまでの評価で発見された問題点を解決し、より使いやすいWebサイトやアプリを構築するためには、具体的なデザイン原則と実践的なテクニックを適用することが不可欠です。ここでは、ユーザビリティを向上させるための主要なポイントを解説します。

情報設計(IA)の最適化

情報設計(Information Architecture: IA)とは、ユーザーが求める情報に迷わずたどり着けるよう、Webサイトやアプリの情報を分類、整理、構造化することです。適切なIAは、ユーザーが直感的にコンテンツを見つけ、理解する手助けとなります。具体的には、サイトマップの作成、ナビゲーション構造の設計、関連コンテンツのグルーピングなどが含まれます。ユーザーの行動パターンや思考プロセスを理解し、それに合わせて情報を整理することで、ユーザーはストレスなく目的の情報にアクセスできるようになります。これにより、ユーザーの満足度向上だけでなく、滞在時間の延長やコンバージョン率の向上にも繋がります。

ナビゲーションの分かりやすさ

ナビゲーションは、ユーザーがWebサイトやアプリ内を移動するための道標です。グローバルナビゲーション(主要メニュー)、パンくずリスト(現在地を示すパス)、フッターナビゲーションなど、それぞれの役割を明確にし、一貫性のあるデザインにすることが重要です。ユーザーが「今どこにいるのか」「どこへ行けるのか」を常に把握できるようにすることで、迷子になることを防ぎ、目的のページへスムーズに移動できます。特に、メニュー項目の名称は具体的で分かりやすいものにし、クリック可能な範囲を十分に確保するなど、細部への配慮がユーザビリティを大きく左右します。

視覚的階層とレイアウト

視覚的階層とは、ユーザーが画面を見たときに、どの情報が最も重要であるかを瞬時に理解できるように、情報の優先順位を視覚的に表現することです。Fの法則やZの法則といった視線の動きを考慮したレイアウト、ホワイトスペース(余白)の適切な活用、コントラストの明確化、そして読みやすいタイポグラフィ(フォントの種類、サイズ、行間など)が重要です。これらの要素を適切にデザインすることで、ユーザーは情報を効率的に読み取り、重要なコンテンツに注意を向けやすくなります。整理されたレイアウトは、情報過多による認知負荷を軽減し、全体的な使いやすさを向上させます。

フォームの使いやすさ

入力フォームは、会員登録や購入など、ユーザーが目標を達成する上で重要な接点となるため、その使いやすさは離脱率に直結します。フォームを設計する際は、項目数を必要最小限に抑え、ラベルは入力フィールドの近くに配置し、具体的で分かりやすい言葉を選びましょう。また、プレースホルダーや入力補助機能を活用して、ユーザーの入力をサポートすることも効果的です。エラーメッセージは、何が問題で、どうすれば解決できるかを具体的に示し、ユーザーが不安なく修正できるように配慮することが重要です。入力形式の指定(例: 電話番号はハイフン不要など)も明確に伝えることで、ユーザーのストレスを軽減し、完了率を高めることができます。

エラーハンドリングとフィードバック

ユーザーが誤った操作をした際や、システムに問題が発生した際に、適切で親切なエラーハンドリングとフィードバックを提供することは、ユーザビリティを大きく左右します。単に「エラーが発生しました」と表示するだけでなく、「何が原因で、どうすれば解決できるのか」を具体的に提示することが重要です。例えば、入力フォームで必須項目が未入力の場合、「〇〇は必須項目です」と明確に示し、該当フィールドをハイライトするなどの工夫が有効です。また、操作が成功した際も、「登録が完了しました」「商品がカートに追加されました」といった明確なフィードバックを視覚的または聴覚的に与えることで、ユーザーは安心して次の行動に移ることができます。

アクセシビリティへの配慮

アクセシビリティとは、年齢、身体能力、利用環境に関わらず、すべてのユーザーがWebサイトやアプリの情報にアクセスし、サービスを利用できるようにすることです。色覚異常のあるユーザーのためにコントラスト比を高くする、視覚障害のあるユーザーのために画像にaltテキストを設定する、聴覚障害のあるユーザーのために動画に字幕を提供するなど、様々な配慮が求められます。WCAG(Web Content Accessibility Guidelines)といった国際的なガイドラインに準拠することで、ユニバーサルデザインの視点を取り入れ、より多くのユーザーに開かれた、使いやすいサービスを提供することができます。これは単なる義務ではなく、潜在的なユーザー層を広げ、企業価値を高めるための重要な要素です。

ユーザビリティ改善の成功事例

これまでの解説で、ユーザビリティの重要性や評価方法、改善の原則についてご理解いただけたかと思います。ここでは、実際にユーザビリティ改善に取り組んだ企業やサービスの成功事例を、具体的な改善内容とその結果と合わせてご紹介します。これらの事例は、読者の皆様が自社のWebサイトやアプリの改善に取り組む際の具体的なヒントとなるでしょう。

ECサイトの事例

ECサイトにおいて、ユーザビリティは売上に直結する非常に重要な要素です。ある大手アパレルECサイトでは、「商品が見つけにくい」「カートに入れてからの手続きが複雑」というユーザーの声が多く寄せられていました。そこで、以下の改善を実施しました。

  • 商品検索機能の改善: 検索アルゴリズムを強化し、曖昧なキーワードでも適切な商品を提示できるように改善。また、フィルター機能(色、サイズ、ブランドなど)をより直感的に配置しました。
  • カート導線の最適化: 商品詳細ページからカートへの追加ボタンを大きく分かりやすく配置し、カートページでは購入までのステップ数を最小限に削減しました。
  • 決済プロセスの簡素化: 会員登録なしでも購入できるようにゲスト購入オプションを導入し、入力フォームも自動入力機能などを活用して手間を減らしました。

これらの改善の結果、サイト全体のコンバージョン率が15%向上し、特にカート放棄率が20%減少するなど、顕著な売上増に繋がりました。

SaaSプロダクトの事例

SaaSプロダクトでは、ユーザーが機能をスムーズに使いこなし、継続的に利用してくれるかが成功の鍵となります。あるプロジェクト管理SaaSでは、新規ユーザーのオンボーディング(初期設定)が複雑で、途中で離脱してしまうケースが多いという課題がありました。

  • オンボーディングプロセスの改善: 初回ログイン時に、プロダクトの主要機能を段階的に案内するインタラクティブなチュートリアルを導入。タスクの作成やチームメンバーの招待など、基本的な操作を実際に体験しながら学べるようにしました。
  • 機能の発見しやすさの向上: ダッシュボードのデザインを刷新し、使用頻度の高い機能を画面上部に配置。また、各機能に分かりやすいアイコンと説明文を追加しました。
  • ヘルプコンテンツの充実: 各機能の近くにヘルプアイコンを設置し、クリック一つで関連するFAQや使い方ガイドにアクセスできるようにしました。

これらの改善により、新規ユーザーの7日後の定着率が25%向上し、結果として顧客のLTV(Life Time Value:顧客生涯価値)の向上に大きく貢献しました。

情報サイトの事例

情報サイトやメディアサイトでは、ユーザーがいかに快適に情報を得られるかが重要です。あるニュースメディアでは、「記事が読みにくい」「目的の情報にたどり着けない」というフィードバックが課題となっていました。

  • 記事の読みやすさ改善: フォントサイズや行間を調整し、長文でも疲れにくいレイアウトに変更。また、見出しや箇条書きを効果的に活用し、視覚的な区切りを明確にしました。
  • カテゴリ分けと検索機能の最適化: 記事のカテゴリ構造を見直し、より直感的で分かりやすい階層に再構築。検索機能も、関連性の高いキーワード予測や絞り込みオプションを追加し、精度を高めました。
  • レコメンド機能の導入: 読了記事に関連するおすすめ記事を自動で表示する機能を導入し、ユーザーが興味のあるコンテンツを継続して見つけられるようにしました。

これらの改善の結果、平均滞在時間が18%延長し、ページビュー数も増加。これにより、広告収益の向上にも繋がりました。

ユーザビリティチェックリスト(すぐに使える!)

Webサイトやアプリのユーザビリティを向上させるためには、まず現状を把握することが重要です。ここでは、すぐに活用できるユーザビリティチェックリストをご紹介します。以下の項目を確認し、自社のサービスがどの程度ユーザーフレンドリーであるかを評価してみましょう。

  • ナビゲーションは直感的ですか?
    • 主要なメニュー項目は明確で、どこに何があるか一目で理解できますか?
    • ユーザーが現在どのページにいるか、常に把握できるような表示(パンくずリストなど)がありますか?
    • 重要なページへのアクセスは、最小限のクリック数で可能ですか?
  • 情報構造は論理的ですか?
    • コンテンツは適切にカテゴリ分けされ、関連性の高い情報がまとめられていますか?
    • 見出しや小見出しは内容を正確に表し、読み飛ばしても概要が掴めますか?
    • 検索機能は使いやすく、目的の情報に素早くたどり着けますか?
  • 視覚的なデザインは分かりやすいですか?
    • 重要な要素(ボタン、リンクなど)は目立ち、クリックできることが明確ですか?
    • テキストのフォントサイズ、行間、コントラストは読みやすいですか?
    • 配色や画像は、ブランドイメージと一貫性を保ちながら、視覚的な混乱を招いていませんか?
  • フォーム入力はスムーズですか?
    • 入力項目は必要最低限に抑えられていますか?
    • 入力例やヒントは適切に表示され、ユーザーを迷わせませんか?
    • エラーが発生した場合、どこに問題があるか明確に伝えられ、修正を促すメッセージが表示されますか?
  • フィードバックは適切ですか?
    • ユーザーのアクション(ボタンクリック、フォーム送信など)に対して、システムは明確な反応を返していますか?
    • 処理に時間がかかる場合、その旨を伝えるローディング表示などがありますか?
    • 成功した操作、失敗した操作のどちらも、ユーザーに分かりやすく通知されますか?
  • モバイル対応は万全ですか?
    • スマートフォンやタブレットなど、様々なデバイスでレイアウトが崩れずに表示されますか?
    • タッチ操作に適したボタンサイズや配置になっていますか?
    • PC版と同等の機能や情報にアクセスできますか?

このチェックリストはあくまで出発点です。これらの項目を参考に、具体的な改善点を見つけ出し、ユーザーにとってより良い体験を提供できるよう継続的に取り組んでいきましょう。

まとめ:ユーザビリティ向上でユーザー体験とビジネス成果を最大化しよう

本記事では、Webサイトやアプリの成功に不可欠な「ユーザビリティ」について、その定義から重要性、具体的な評価方法、そして実践的な改善テクニックまでを網羅的に解説してきました。

ユーザビリティは単なる「使いやすさ」に留まらず、ユーザーの行動を促し、ビジネス成果に直結する重要な要素です。コンバージョン率の向上、離脱率の低下、顧客満足度の向上、そして結果としてのブランドイメージ強化は、すべてユーザビリティの改善によって実現され得るものです。

ユーザー中心の視点に立ち、情報設計の最適化、分かりやすいナビゲーション、使いやすいフォーム、適切なエラーハンドリングといった原則を適用することで、ユーザーはストレスなく目標を達成できるようになります。そして、その快適な体験こそが、サービスへの信頼と愛着を育み、長期的な関係へと繋がっていくでしょう。

このガイドが、あなたのWebサイトやアプリのユーザビリティを客観的に見つめ直し、具体的な改善アクションを起こすための羅針盤となれば幸いです。今日からぜひ、ユーザーの「使いやすい」を追求し、ユーザー体験とビジネス成果の最大化を目指してください。

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この記事の監修者

脇村 隆

1997年のインターネット黎明期よりWeb制作に従事。イニット(現・トランスコスモス)、ぴあデジタルコミュニケーションズ、NRIネットコム等にて、HTMLコーダー、ディレクター、プロデューサー、コンサルタントとして大手企業Webサイト構築の上流から下流まで一貫して担当。
コーポレート/サービス/金融機関サイトの再設計や情報設計を軸に、自然検索からの集客向上とCV改善を多数実現。2012年にプラス・ムーブメント合同会社を設立し、14期目を迎える現在もWebサイト制作・PR支援を展開。商工会・自治体をはじめ公的機関案件を12年連続で継続支援し、運用内製化や業務効率化(kintone等)まで伴走。
単著『アフィリエイターのためのWeb APIプログラミング入門』をはじめ、各種セミナー登壇多数。GUGA 生成AIパスポート(2025年6月取得)を保有。
現在は「AIミライデザイナー」代表として、戦略立案からWebサイト実装・SEO対策、集客後のAI・DX推進までを伴走型でワンストップ提供。